2019年5月15日水曜日

アサヒスーパードライ - ASAHI SuperDRY -

アサヒスーパードライ。


日本で最も売れている缶ビール。

一般家庭に市販されているビールの中で圧倒的に売れているのがスーパードライ。
そう、「理屈じゃない」んです。


これまでの「ビールは苦いもの、重くて苦くてなんぼ」という概念を根底から覆す、すっきり辛口ビールとして登場すると、あれよあれよと販売数を伸ばし、アサヒビールをビール市場占有率国内No.1ビールメーカーにのし上げました。

マーケティングリサーチから飲み物(ビール)に求められるニーズが変化すると読んだアサヒビールは、苦みや甘さを抑えたビールとしてこのスーパードライを販売しました。
いわゆる科学的なマーケティングアプローチで成功したビールといわれ、経営学の教科書でも取り上げられることが多いです。

スーパードライの販売前のアサヒビールは弱小ビール会社(失礼)であり、市場シェアが少なかったということも大きな味の変化をできた一因ではないかと考えられます。


で、このアサヒスーパードライ、昔はとても好きでした。
始めてビールを飲むようになった頃、いろいろなビールを飲んだ中で最もおいしいと感じたのがアサヒスーパードライでした。

いま思えば、ビールの味もわからない頃にビール単体で飲むときでは、単に苦いビールよりも苦みが少なくてすっきりしているほうが飲みやすいという理由に納得がいきます。ビールの苦さに慣れていないというのも大きかったはずです。

アサヒビールはその後発表した発泡酒「アサヒ本生」も、登場時にはこれがまたフルーティでビールテイストというよりは、白ワインを意識させるような印象でした。
過去から引きずっているビールのイメージに真っ向から立ち向かったからこそ、アサヒビールは起死回生できたのかもしれません。


自称ビール通やクラフトビール好きの人たちからはいまいち人気のないアサヒスーパードライ。
それもそのはず、これまでのビールではないビールを作ろうとして完成したビールですから。靴でいえばリーガル2235NAではなくアシックスRUNWALKなんです。

キリンラガービールやエビスビールの代替品ではありません。スーパードライの台頭に危機感を抱いたビール各社がドライビールを次々出しましたが、結局残ったのはこのスーパードライです。結局ドライを並べてもアサヒスーパードライが勝ったのは嗜好の追求とマーケティング(とブランディング)のなせる業でしょう。

余談ですが、他社に先行していれば強いというわけでもないのはノンアルコールジャンルにおけるキリンを見ていてもわかります。


「こんなのビールではない」
「発泡酒と変わらない」

繰り返しになりますが、これまでのビールと比較する飲み物ではないんです。


スーパードライはビールとして売られていますが、これまでのビールカテゴリーの枠を広げる新しい飲み物なのです。
アイラのウイスキーとスペイサイドのそれが異なるように、プレミアムモルツとアサヒスーパードライは素材や製法や税法上のカテゴリーは同じになっていますが全く異なる飲み物です。これは優劣ではなく性格の違いではないでしょうか。


おやつに羊羹や饅頭よりもケーキやスナックを食べるようになるくらい好みが変化しているのですから、飲み物も必ずしも過去のものだけが「正しい」わけではなさそうです。

スーパードライはキリンのビールとはまた違った形で食事に合うビールです。
どちらかというと素材の味を活かすような和食に合いそうで、日本酒に通じるものを感じます。

最近はお鮨屋さんでビールを頼むとアサヒスーパードライが出てくることが多いのも、このビールが主張しすぎない味だからなのかもしれません。(ただ人気があるからという理由かもしれません)
刺身、いたわさなどの練り物、厚揚げあたりにも合うような気がします。
味や香りにクセがないので食事と喧嘩するようなことがなく、あっさりした食べ物はもちろん、こってりとしたものを食べているときにリセットしたくなるような場合にもあっている感じです。

ペペロンチーノのときなんかも、やっぱりスーパードライでお口直ししたくなります。ボロネーゼやミートソースの時はスタウト系でも良い感じですが、なぜかペペロンチーノだとスーパードライがいいような気がしてしまいます。

コクではなくキレにこだわったビールであるがゆえに、何と合わせてもぶつかることがない安心のビールですね。
面白みがなく、物足りないときはありますが、オールラウンドプレーヤーですのでよほどビールにこだわりがある人を除いては、食事と一緒に出すには安心の定番という感じです。


アサヒビールにはスーパードライのちょっと前に発売された飲食店限定(最近限定で缶が出た)の「アサヒ生ビール(通称マルエフ)」があります。
マルエフは缶で飲むとイマイチな感じがしますが、お店で樽生を飲むと意外や(?)何杯もいけてしまう不思議な雰囲気があるビールです。飲み比べるとアサヒビールがスーパードライでやりたかったことが何となくわかる気がします。



押し出しの少なさもアサヒスーパードライの特長であり、万人受けするビールとしてこれからも変わらぬシェアを続けそうです。

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